昨今インカムの普及でヘルメットにスピーカーを取り付けるライダーが増えてきました。またハイレゾ音源、ポータブルオーディオのブームから一般に定着し、対応機器も増えています。ここでは走行中も高音質で音楽を楽しむ為のヘルメットについてまとめたいと思います。
目次
まずはヘルメットから探してみる
まず音楽を試聴する際のヘルメットの選び方です。いわゆるサーキットユースとは少し選び方のポイントが異なります。
オーディオというとスピーカーの質で左右されるのが一般的ですが、ヘルメットに装着するスピーカーの場合、再生環境が非常に過酷なため、ヘルメットの性能が音質を大きく左右します。特に低音の再生に違いが出るため、スピーカー以上にヘルメットへ投資することのリターンが大きいです。
2017年現在では、ヘルメットにスピーカーを装着されている方も多いかと思います。そうでなくてもこの業界、DIY精神豊富な方が沢山いるので自作でスピーカーを用意されている例もちらほら。とりあえずここではヘルメットにスピーカーを装着することを前提に、ベースとなるヘルメットの選択基準を挙げていきます。
ベースとなるのはフルフェイス
ヘルメットの形状はフルフェイスを選ぶのが最も無難です。というのも最も気密性が高いのがこのタイプだからです。
オートバイの運転中は激しい走行風にさらされるため、気密性が低いヘルメットは侵入する風の音で音楽が聞こえなくなってしまいます。オフロードのヘルメットの様な風がばんばん入ってくるモデルは一定速度以上になると厳しいです。60km/hでも大きく差が出ます。
街中では音漏れの問題も顕著ですので、以前流行したのスピーカー全開のビッグスクーターみたいな方向を目指さない限りはフルフェイスを選ぶことをおすすめします。装着時に窮屈さの無いジェットヘルメットを愛用されるライダーは多いですが、どうしても前面が大きく開口するヘルメットが欲しいならシステムヘルメットという手もあります。
また、フルフェイスの中でも内装がしっかり詰まっていて遮音性が高い物ほど高速走行時でも有利です。残念ながら遮音性の高さは値段に直結しており、安い物ほど遮音性がいまいちという傾向が有ります。
国内ではAraiやSHOEIの様な有名ブランドなら不足はありません。この2大メーカーの製品はスピーカー設置も想定した設計になっているため、DIYでスピーカーを取り付ける際も簡単です。個人的にAraiの遮音性はかなり良好です。
現在、私の手持ちのフルフェイスも参考に幾つか装着モデルを検討してみました。
OGK FF-R3
OGKのFF-R3は定価2万円、amazon辺りでは1万3000円くらいの比較的安いモデルです。眼鏡用のスリットも備えられており、わざわざコンタクトをしたくない日にはかなり重宝しています。安全性はこのクラスでも十分確保されているので、ユーザーも多いです。
ただこのクラスでは後述のArai等に比べると防音性の面でちょっと心許ないです。このクラスを使っていて不満の有るライダーはヘルメットのステップアップの恩恵を受け安いです。
Arai ASTRO IQ
AraiのASTRO IQは定価4万5000円、割引されて大体3万円弱くらいで購入出来ます。
値段的には上のFF-R3の倍以上の高級機です。ただし装着時のホールド感はこちらの方が数段心地良く、頭に上手くジャストフィットして全くずれません。この辺りの価格帯になってくると、空気抵抗やベンチレーション等の宣伝文句が次々と飛び出してきます。
走行中の防音性という面でも大変優れており、Z-7よりもやや勝っています。今回の目的である音楽再生用のみならず、インカムでの通話等を行うなら、このレベルの防音性が欲しいところです。
今回使用するのはこのSHOEI Z-7!
ショウエイ(SHOEI) バイクヘルメット フルフェイス Z-7 マットブラック M(57cm)
今回の実験に使用するヘルメットは、より防音性の高いフルフェイスタイプとします。中でも多くのライダーに支持されるモデルとしてSHOEIのZ-7を選択してみました。購入するライダーが多く、このヘルメットを基準点としたいと思います。
また、SHOEI製ヘルメットの一部のモデルには、下の様なイヤースペースが設けられおり、スピーカーがスッポリと収まる構造になっています。
スピーカーを設置するのに最適とSHOEIユーザーの間で話題になっていますが、確かに今回の用途には丁度良いスペースです。
フィット感が高過ぎるヘルメットはスピーカーを中に仕込む時に苦労しますから、丁度良い空間が有るこの様なモデルは貴重です。Z-7の他には、以下のSHOEI製ヘルメットで同様のイヤースペースが配置されています。
X-Fourteen
2016年4月発売のSHOEIのNEWフラッグシップモデルです。MotoGPでも使用される最高級レーシングヘルメットになります。これはどちらかというとサーキットユーザーが購入する物ですが、レーシングスピードでの走行時の空気抵抗の低減を考慮している点は今回の用途にもそのまま使えます。
GT-air
一方、ツーリングユーザーに厚い支持を受けているのがこちらのGT-airです。
SHOEIが本格的な静音設計で製作したプレミアムツーリングフルフェイスのこのモデルは、今回の様に音楽を聴きつつ、きままにツーリングしたい方にはかなり向いています。顎部分のカーテンが下からの風の巻き込みを防いでくれるため、強い風が吹き付けるシーンでも安心です。日差しが強い春から秋口までのシーズンは、インナーサンバイザーも有り難い装備ですね。定価で5万円、大体3万円強で購入できます。X-Fourteenに比べれば価格はこなれているので、ツーリングオンリーならこれも有りです。
ヘルメット内部の取付けスペースについて
SHOEI製ヘルメット用スピーカーの実際の取り付けや運用に関しては別に詳細をまとめてみました。また高音質な社外品のスピーカーを検討されている方には、サウンドテックシリーズが周波数特性もバイクでの使用に最適化されておりおすすめです。
大排気量車は不利?
ヘルメット内の音楽再生時に、風切り音と同等かそれ以上に課題になるのが、エンジン音です。特にエンジン音が大きくなる大排気量車は、その点どうしても不利な傾向に有ります。重低音に近い音が足下から響いてくるので、音楽の中低音以下をマスクしてしまいます。ヘルメットの遮音にも気をつけないと高音だけのスカスカな音になりがちです。反面250cc以下のエンジン音自体が小さくなるバイクの場合は、これはそこまで気になりません。
イヤホンはかなりのグレーゾーン
走行中に音楽を聴く手段としてスピーカーの設置以外に、遮音性の極めて高いカナル型のイヤホンを使用されるケースが有りますが、お住まいの地域の条例に抵触する可能性が有ります。その為、ここで具体的な使用法に関して提示することは控えさせて頂いています。あまり外部の音を遮断してしまう方法は取らない方が良いというスタンスです。有線式のイヤホンに関して言えば、頭にフィットしたヘルメットを装着する段階で確実にずれるので、そういう意味でもあまりおすすめできません。