雑記

【超初心者向き】サイアノタイプ(青写真)の始め方

サイアノタイプ

こんにちは、MOSです。

皆さんは青写真を自分で作ったことは有りますか?恐らく殆どの人が家庭で作ったことは無いと思います。
アート技法としてはかなり歴史があるのですが、作り方を詳しく説明してくれるところがあまり多くないので、ここでは基本的な作り方やポイントを解説していきたいと思います。

サイアノタイプとは?

正直サイアノタイプは非常にマイナーなアート技法です。

僕も時々販売していますが、”本物のサイアノタイプは初めて見ました”という感想も寄せられます。あまり作ってくれる人もいないので、アート作品として2022年現在、鑑賞する機会は多くないかも知れません。

サイアノタイプの魅力

サイアノタイプ

サイアノタイプの最大の魅力は何といっても、色鮮やかなブルーを基調とした完成品が得られることです。このブルーの度合いは制作者の好みで換えられ、より明るいブルーや、黒に近いネイビーなど、好みの色味を見つけるのも楽しみの一つです。

制作の難易度としては、シルクスクリーンやプラチナプリントなどに比べて薬品も少なく簡単で、家庭でも楽しむことが出来る作業内容です。

本物のサイアノタイプの見分け方

ここで一点、今はデジタル写真の加工技術の向上により、サイアノタイプっぽい加工というのも容易に行えるようになりました。こういった”サイアノタイプっぽい写真”と本物のサイアノタイプを見分けるにはどうすれば良いのでしょうか?

まずサイアノタイプは現代のインクジェット印刷に比べてもダイナミックレンジが狭く、黒つぶれや白飛びが出やすいのが特徴です。暗部階調に乏しく、一定の暗さから一気に黒くなるため、全体的に薄暗く影の存在感が強くなります。また完全な白を目指しても薄ら青くなってしまいます。なのでややローレンジな仕上がりとなります。

そもそも刷毛で手作業で作るサイアノタイプは完全な1点物で、同じ物は出来ません。

これに比べてデジタル加工で再現した物は暗部階調性が高く、クッキリパキッとした質感になります。これはこれで悪くないのですが、サイアノタイプ本来のアナログっぽさは大幅に減じるため、見比べるとすぐに分かります。

必要な薬品はキット化済み

サイアノタイプに必要な薬品は広くキット販売されており、Amazonでも簡単に購入できます。成分は基本的に国内外で変わりが無いので、これで十分対応できます。また、かなりの量が作れるので、趣味で使うなら1年は持つかも?という薬品量です。

使い方は2つの薬品を水で希釈するだけです。それぞれ希釈する水の分量が変わるため、まず2液作って必要に合わせて混合するのが良いでしょう。

薬品塗布と乾燥

出来上がった溶液は、ベースになる紙に塗布して、暗所で乾かします。紫外線に反応するので、出来るだけ光の当たらない場所を選んでください。また、少し湿度が高い方が良いので、僕は段ボールの中に仕切りを作って干したりします。

この時、塗り方にムラが有ると、それが完成時に残ってしまうことが有ります。縦横に交差するように溶液を塗ると、ムラが抑えられて仕上がりが綺麗です。

塗るのは刷毛でも良いですが、スポンジブラシを使うと毛が抜けず、ゴミが入りづらいです。また、多少のゴミは完全乾燥後に払い落とすことが出来ます。

肝心なネガフィルム作り

次に絵柄を焼き付けるフィルムが必要です。
これは余白部分にある程度の透過性が必要なので、インクジェット用のOHPフィルムなどを使います。
この時、フィルムはモノクロ反転させて下さい。絵柄を焼き付けたとき、黒い部分は白くなり、透明な余白は黒くなるからです。
フィルムを印刷したとき、グレー部分があまり薄いと黒つぶれの原因になるため、トーンカーブで少し調整してあげると仕上がりが綺麗です。

最後は紫外線で感光

サイアノタイプの溶液は紫外線で化学反応を起こします。この過程で独特な青い発色が得られるわけです。

これは太陽光でも十分なので、フィルムを紙と密着させ、屋外に放置すれば出来上がります。この時、出来るだけ両者の密着性を高めるため、ガラスで挟むと密着状態を保てます。もし隙間が有ると、綺麗に絵柄が残りません。

紫外線を当てる時間ですが、反応が進むほど、紙が薄い緑色から黒に近くなります。この時、紫外線を当てる時間を短くすると、青の発色が淡くなるため、好みで時間を調整しても良いですね。

作業中の水分に注意

サイアノタイプの薬剤は水で流れてしまうため、紫外線を当てるまでは水気は厳禁です。特に夏場は汗の水滴が落ちてしまうことが有りますが、染みになってしまうので注意しましょう。

最も難しい洗浄作業

紫外線照射が終わったら、余計な薬剤を洗浄して流していきます。実はこれがサイアノタイプの仕上がりに一番影響を及ぼすところです。
なのにあまり詳細を説明されていないことが多いので、ここでは順を追って説明します。

洗浄には2種類の水溶液を作るため、バットが2つ必要です。これはプラスチック製の一般的なバットで事足ります。写真が完全に水溶液に浸るようにやや大きめを選んでください。

次に2つのバットにクエン酸溶液と、オキシドールか過酸化水素水を溜めます。

まず、最初にフィルムを外した紙をクエン酸溶液に浸します。

クエン酸は洗剤として市販されている物を水で薄めた物で、大体数%、多くても5%くらいで十分です。極端に濃度を上げても効果は変わりないです。
浸してしばらくすると紙表面の余計な溶剤が溶け出してくるので、軽くゆすいでやります。溶剤の除去はクエン酸溶液の化学反応だけで十分です。ブラシなどは必要ありません。

そしてクエン酸溶液から取り出した物を、オキシドールの原液に漬けて2度洗いします。

オキシドールは100均などに売られている物でも構いません。高い物で無くて良いです。
ここでオキシドールに漬ける目的としては、青部分の化学反応を促進させることによるコントラスト強化、漂白作用による残った溶剤の除去の二通りです。

クエン酸溶液だけだと完全に不要な溶剤を除去できないため、オキシドールを使います。
またオキシドールに漬けると一気に青色が濃くなるため、視覚的にとても面白いですよ。
希釈される方もいますが、僕は少量の原液に浸しています。

最後は干して出来上がり

オキシドールから引き上げた紙は干して出来上がりです。
この時、紙が反り上がらないように洗濯ばさみなどで挟んでおくと、仕上がりが綺麗です。紙が乾燥する過程で、青部分も自然と反応が進み、より青色を増していきます。

額装すれば完成

出来上がったものは額装してやれば気軽に部屋に飾ることが出来ます。家庭のサイアノタイプはA4サイズくらいが多いと思います。

ハクバのこれなどはウッドフレーム+アクリル前板で見栄えが良く、コストパフォーマンスも高いです。

サイアノタイプ最大の要素は紙

以上が、サイアノタイプの基本的な作り方になります。ここからはクオリティを上げていくためのポイントです。

薬剤は既に決まった配合があるので、ここで変化は付けづらいです。では、サイアノタイプで仕上がりに最も影響するのは何か、というと母体となる印刷紙になります。

事前に混ぜた薬品を紙へ塗布すればベースが完成するわけですが、この紙の選択で仕上がりも大きく変わってきます。

例えば、より白い紙では明るいブルーに、ベージュの紙では少し緑がかった渋みの有る青色に変わります。
個人的には少し黄色がかった紙が好みなのですが、一般的なサイアノタイプのイメージとしては、明るい青が好まれるようです。

サイアノタイプ用の紙の選び方

さて、実際にサイアノタイプに適した紙ですが、これは水彩紙として売られている紙を使うことが多いです。これは水に強く、紙が波打たないことが大きいです。勿論、水彩紙以外の紙も使えますが、薬品が乾く過程で縮まないように多少の厚さが求められます。

水彩紙から選ぶとき、細目と書かれているものがサイアノタイプには適しています。粗目は表面にシボが有り、雰囲気があるのですが、薬品が紙表面に強く食いつくため、全体的に青色がかった仕上がりになって綺麗な白さが出づらいです。

お手頃で仕上がりも綺麗な紙としては、ミューズのホワイトワトソンが品質良く価格もこなれています。この紙の特徴は紙本来の白さがとても綺麗で、青+白の綺麗なコントラストを保った作品に仕上がります。ほんのり凹凸の出た紙質もアナログな雰囲気が有って、とても絵画的です。
とりあえず入門としては、ホワイトワトソンはおすすめです。画材屋さんなどでも普通に買えるため、入手性は非常に高いです。

ホワイトワトソンの難点としては、中目なので洗浄が上手くいかないと、余白が薄い青で染まりがちなことです。青色を非常に綺麗に出す紙なのですが、もしより白さを強調したいなら細目と指定されている紙を使いましょう。

安価なところではヴィフアールは綺麗な細目で、溶剤除去がしやすく、紙本来の白を取り出しやすいです。ただ発色はホワイトワトソンに譲るイメージ。

また、サイアノタイプに使う紙は決して高い紙が正解では有りません。僕は一時期ハーネミューレ・プラチナラグという専用紙を使っていましたが、これは仕上がりは良いのですが、薬剤を塗り込むときの刷毛目が出やすく、中々扱いの難しい紙でした…。

同様にアルシュも独特なナチュラルカラーの紙質や溶剤の除去性など、僕は苦手な紙です。一般に高品質と言われる紙も、必ずしも好みの仕上がりにはならないので、気になる紙は少量買って試作するのが良いと思います。